静かな春〜クリスティーナ・ロセッティ。。。

白谷仁子

2018年02月07日 19:54

午後の陽射しの明るさは、
必ずしも穏やかな風を呼ぶとは限らない。。。

バード・バスに春告鳥がやって来るのは
いつのことだろう。。。








雪を背負ったオリーブの木に、
熱心に実をついばみに来るヒヨドリたち。

今年は収穫しそびれた大粒のオリーブの実が、
まだたくさん枝にぶらさがっている。
しかし、あの子達のおかげで
私の後悔は今1ミリもない。







忙しそうに飛び回るヒヨドリに言ってあげたい。
「美味しいものは、ゆっくりと味わってたべるものですよ。あなたたちのごちそうを、誰も横取ったりはしないから。。」

長い長い宇宙時間の中で、
ロセッティの「静かな春」の風景にも代わる自然の瞬間を、
今、自分は生きているのだ・・・
そんなことを思いながら耳をすます。






Spring Quiet
Christina Georgina Rossetti

Gone were but the Winter,
Come were but the Spring,
I would go to a covert
Where the birds sing;

Where in the whitethorn
Singeth a thrush,
And a robin sings
In the holly-bush.

Full of fresh scents
Are the budding boughs
Arching high over
A cool green house:

Full of sweet scents,
And whispering air
Which sayeth softly:
"We spread no snare;

"Here dwell in safety,
Here dwell alone,
With a clear stream
And a mossy stone.

"Here the sun shineth
Most shadily;
Here is heard an echo
Of the far sea,
Though far off it be."




静かな春
クリスティーナ・ロセッティ


冬が去って春が来ると
待ちわびていた鳥らは歌う。
ツグミはサンザシで
コマドリはモチの木で
若く香る小枝は、
まだつめたい温室の屋根にも伸び、
風は甘く香り優しく語りかける。
清い流れと自然に中、
人はここで満ち足りて暮らす。
春に輝く太陽の光と、
遠くで歌う海のせせらぎをききながら。。。






クリスティーナ・ロセッティ (1830-1894)というイギリスの女性詩人に憧れる人は多いことでしょう。
金子みすゞさんの自選集「琅かん集」の冒頭を飾ったのもクリスティーナ・ロセッティ の詩でした。

私も何度か朗読会でとりあげました。
音人里ブログ
http://otohitosato.shiga-saku.net/e1239542.html

宮崎駿さんの映画「風立ちぬ」の中で、主人公の堀越二郎が口にする詩の冒頭「誰が風を 見たでしょう 僕もあなたも 見やしない」。
西条八十の訳詞で語られるロセッティのあまりにも有名で美しい詩に、たくさんの想いがこみ上げて、映画を見ながらいきなり涙をポロポロ流したものです。
クリスティーナ・ロセッティ、堀辰雄、立原道造・・・無理もありません。

詩人達が私たちに残してくれた言葉の数々に、ただただ感謝するばかり。
短いたった一つの詩に、心はどれほどのプレゼントをもらったでしょう。。。


    Wind
Christina Georgina Rossetti

Who has seen the wind ?
Neither I nor you;
But when the leaves hang trembling
The wind is passing thro'.

Who has seen the wind ?
Neither you nor I;
But when the trees bow down their heads
The wind is passing by.


     風
クリスティーナ・ロセッティ 詩(訳詞 西條八十)

誰が風を 見たでしょう
僕もあなたも 見やしない
けれど木の葉を ふるわせて
風は 通りぬけてゆく

誰が風を 見たでしょう
あなたも僕も 見やしない
けれど樹立が 頭をさげて
風は 通りすぎてゆく



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