しづかな 画家。。。
しづかな 画家
だれでも みてゐるな、
わたしは ひとりぼつちで描くのだ、
これは ひろい空 しづかな空、
わたしのハイ・ロマンスを この空へ 描いてやらう
八木重吉「秋の瞳」から
毎日見ている風景が、全く違って見える時がある。
それがとびきり美しかったりすると、「昨日はもっと綺麗だったかもしれない・・・」なんて無頓着だった昨日を悔いたりもする。
だけれど、こんな空を見たときは、きまって幼い頃を思い出してしまう。
目の前のことしか見えていなかった。
目の前のことだけ見ていればよかった。
知らないこと、楽しいこと、おっかないこと。
その全部が未来だったあの頃は、毎日が「初めての出会い」だった。
真っ赤な実がどうしても欲しくて、雑木林の柵によじ登って蔓ごと引っ張ってとった烏瓜は、ピカピカに光っていた。
だんだん暗くなる空に気づき、一目散に家に向かって走った。烏瓜をしっかりと握りしめて。
汚れた服とひっかき傷だらけの小さな手に握った実を見て、母は「頑張ったね〜」と笑った。
お夕飯のあたたかいにおいと、父の大きな背中、そして母の笑顔があれば、何も怖くなかった。
美しい空と幼い頃の思い出。
音楽もまた、忘れていた記憶を取りもどしてくれる。。。
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