ゆさぶれ ゆさぶれ。。。

白谷仁子

2020年04月14日 17:18

人は「きっかけ」がないと「きづく」ことができない。
良いことも、悪いことも、自分の心にも。


《茱萸 花言葉「心の純潔」》



茱萸の木が、真っ青な空の下、強風にあおられていた。
たわわなアイボリーの小花はびくともせず、ほとんど人の通らない道の脇に、それは美しい光景を作っていた。
この花たちが宝石のような朱い実をつける秋の頃、何が変わるのだろう。

詩人の倍も生きているのに、
生きているからこそたどり着けない安堵がある。





  わかれる昼に

ゆさぶれ 青い梢を
もぎとれ 青い木の実を
ひとよ 昼はとほく澄みわたるので
私のかへつて行く故里が どこかにとほくあるやうだ

何もみな うつとりと今は親切にしてくれる
追憶よりも淡く すこしもちがはない静かさで
単調な 浮雲と風のもつれあひも
きのふの私のうたつてゐたままに

弱い心を 投げあげろ
噛みすてた青くさい核たねを放るやうに
ゆさぶれ ゆさぶれ

ひとよ
いろいろなものがやさしく見いるので
唇を噛んで 私は憤ることが出来ないやうだ
       〜立原道造「萱草に寄す」より〜







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