地異のかたみ。。。
「ヒト」を見る。
「ヒト」を感じる。
「ヒト」ではなく、「モノ」を見、「コト」を感じたら、心は違うところに居場所を見つけることができる。
地異・・・という言葉は、共に生きることを教えてくれる。
今朝ふと、立原道造氏の「はじめてのものに」を読みたくなった。
立原道造全集(全6巻 角川書店)は、私の宝物だ。
第1巻は、詩集『萱草に寄す』SINATINE NO.1「はじめてのものに」から始まる。
はじめてのものに
ささやかな地異は そのかたみに
灰を降らした この村に ひとしきり
灰はかなしい追憶のやうに 音立てて
樹木の梢に 家々の屋根に 降りしきつた
その夜 月は明かつたが 私はひとと
窓に凭れて語りあつた(その窓からは山の姿が見えた)
部屋の隅々に 峡谷のやうに 光と
よくひびく笑ひ声が溢れてゐた
――人の心を知ることは……人の心とは……
私は そのひとが蛾を追ふ手つきを あれは蛾を
把へようとするのだらうか 何かいぶかしかつた
いかな日にみねに灰の煙の立ち初めたか
火の山の物語と……また幾夜さかは 果して夢に
その夜習つたエリーザベトの物語を織つた
浅間山の噴火は、その時、道造氏の心にどんな灰を降らせたのだろう。
そんなことを、つい考えてしまう。
灰に埋もれた小さな松の木や、穴だらけの石を手に取り、自分の呼吸を感じた日から6年が過ぎた。
火の山の物語と、エリザベートの物語。
シュトルムの『みずうみ(インメン湖)』という物語と道造氏自身の「いま」を重ねているかのように思えるのは私だけだろうか。
樹木や屋根に降る灰、仲間との語らい、そして、作者の少し離れた場所に、明るく笑うエリザベートが姿が見えるような気がする。。。
ー追記ー
立原道造全集(全6巻)が私のものになったときの喜びと興奮は、それはそれは大きいものだった。
子供の頃はSF小説や推理小説ばかりに夢中になっていた。
その頃の私は、たった一つの詩『夢みたものは』が、これほど自分の世界を大きくしてくれるとは思ってもいなかった。
《立原道造全集 第1巻 角川書店》より
関連記事