
2016年09月28日
パコ・デ・ルシア〜灼熱のギタリスト。。。
「私にとって一番の誇りは、音楽をとおして旅の足跡を残したことだ。」
〜パコ・デ・ルシア

曇り空の京都に着いたのは、朝の9時過ぎ。
今は亡き、一人の偉大なギタリストに、スクリーンごしに会いにいった。
カルロス・サンタナ、チック・コリア・・・・
当時、共演していたアーティストたちのことは、高校時代から兄の影響で知っていたが、フラメンコ界に革命を起こしたギタリスト「パコ・デ・ルシア」について知ったのは、極最近で、それは私にとって、とても残念なことだ。。
初めてその演奏を聴いたときは、そのリズムの全てが音楽を支配していることに、驚きと爽快さを感じた。
人間が体内に持つ時間の流れを、恐ろしいほどに潔いリズム感で刻んでいくその演奏に、私は自分の時間を奪われたように思えた。
晩年、マヨルカ島で過ごすパコの映像と言葉。
「私は孤独が好きだ。独り暮らしに慣れている。人生の8割は独りで生きてきた。やりたいことが多いから退屈しない。」〜パコ・デ・ルシア
アンダルシアから世界へと羽ばたいたパコの人生を、けして全てを映し出すことは出来ないスクリーンの中に観た私は、ギターの音色はもちろん、今は亡きパコの口から音楽のように流れ出す言葉の重みに、終了してからしばらく腰を上げることが出来なかった。

明るいロビーに出た私は、パコがレコーディングの時、即興で作ったという『二筋の川』を、無性に聴きたくなった。。。
「この人生を、即興で生きてきた。」〜パコ・デ・ルシア
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2016年09月25日
音楽劇「美味しいメロディー」合唱団、楽しく練習中!。。。
歌うこと、笑うこと、息をすること・・・幸福であること。
《解熱作用のあるサラシナショウマ(晒菜・更科・更級升麻)花言葉「愛嬌・温かい心・感じのよい人」》

綺麗な容姿で人目を誘うサラシナショウマは、伊吹山では8月の終わりから9月初めにかけて、温かいところでは10月にその可憐な姿を見せてくれる。
秋は、春とは違う自然の姿を私達にみせてくれる。
伊吹の山麓、薬草の里文化センターで、音楽劇「美味しいメロディー」合唱団の4度目の練習が昨日おこなわれた。
響きわたる歌声と笑い声に、鏡張りのレクレーション室は温かい空気でいっぱいになった。
心がほどける・・・という瞬間を、音楽を通して私は度々感じる。
歌声は、心を正直にうつしだす。
8月の終わり頃に登った伊吹山。
一面のサラシナショウマが、楽しげに歌っている人のように見えた。
幸福な光景に、暫し一人、足をとめた。
あれから10年以上経つけれど、私の中のコーラスのイメージは変わらない。。
歌うこと、笑うこと、息をすること・・・
それは幸福であること。
2016年09月21日
一輪の芙蓉に。。。
一輪の芙蓉に秋をとどめたり(虚子)
《芙蓉 花言葉「繊細な美」》

あの日はやけに、その花の白さが目についた。
夏も終わりに近づいているというのに、あちこちで柔らかな花を揺らす芙蓉の花。
「良薬口に苦し」という言葉があるが、その白い花が「良薬」であると、母から聞いていたから尚のことかもしれない。
夕方、下りの新幹線は予想通り空いていて、自由席の車両には私と後ひとり、男性が乗っているだけだった。
思い出されるのは厳しかったレッスンと、きっといつまでたっても追いつけない、強く華やかで美しい姿。
私は静かな車内で、ゆっくりと学生時代を思い返すことが出来た。
あのころ、私にとって一番こわくて憧れだった、恩師のことを。

歌いたい曲が増えるたびに、不思議とあのころの一語一句が甦る。
自分の本当の声は、自分でしか探しあてることは出来ないのだと。
その努力が出来なければ、自分が納得する歌など歌えないのだと。
あのころ理解出来なかった言葉の一つ一つが、今になってようやくわかってきた気がする。。。
気がつくと、指導を受けていた頃の恩師の年齢に、いま私はやっと追いついた。
「今の子は、怒るとやめちゃうのよね。。。」
卒業してしばらく経って恩師の元を訪れた時、笑いながら、そして少しさびしそうに言っていたのが、つい昨日のような気がする。
私にとって、恩師の言葉はまさに「良薬」だった。
褒めてもらおうと、練習すればするほど、周りからどんどん置いて行かれるような寂しさに襲われた。
やさしく励ます代わりに、目の前に居るたった一人の私の為に、コンサート宛らに歌ってくれたフレーズを、今でも鮮明におぼえている。
「教える」仕事をするようになって、その指導の偉大さを知った。
自分は生徒達にどれだけの「良薬」をあげられるだろうか。
いつか、あの子たちが大人になって、私の言葉を、歌を、たった一つでも思い出してくれることがあるだろうか。。。
たくさんの、だけどとてもシンプルな思いの中、ありったけの感謝を込めて、私は恩師と最後のお別れをした。
一輪の芙蓉に秋をとどめたり・・・
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2016年09月18日
運動会と赤とんぼ。。。
赤とんぼ
赤とんぼが
うかんでる
ため息のように ながれてる
〜八木重吉 詩稿「母の瞳」〜

昨日は地域の小学校で運動会がおこなわれていた。
心配していたお天気も、なんとかもったようだ。
私のところに通う生徒達も、昨日は大切な思い出を、一つこさえただろう。
もう、うんと前。。。
閉会式、夕暮れの空いっぱいに飛んでいた赤とんぼ。
校長先生のお話は、なんにも耳に入らなかった。
空を見上げて、たくさんの命が飛び交うのを、ただただ見ていた。
思い出の断片には、いつも命の存在があった。
けして戻れない道のりの重さは、教科書の活字や成績表ではなく、身近にあって繰り返される、短い命の亡骸たちが教えてくれた。。。
かわいい声援、ひたむきな目、とびきりの笑顔を、いつも応援してあげなくてはいけない。
私達がかつて、そうしてもらったように。。。

秋の空
秋が呼ぶようなきがする
そのはげしさに耐えがたい日もある
空よ
そこのとこへ心をあづかってくれないか
しばらくそのみどりのなかへやすませてくれないか
〜八木重吉 詩稿「母の瞳」〜
2016年09月16日
『SONNET〜ひとり芝居』に寄せて〜朝に。。。
新しい朝はやって来る。
良いことがあった日の夜も、泣きながら眠った夜も、次に目覚めた時には新しい朝がそこにある。
誰かに見せたい花と、誰かに食べさせたいごちそうと、自分のとっておきの笑顔を、新しい朝は迎えに来る。
もしも、誰かの「朝」になれたなら、来る日も来る日もぴかぴかの、誰かの「朝」になれたなら、こわいものなど何ひとつない、つよい心を授かるだろう。。。

朝に
おまへの心が 明るい花の
ひとむれのやうに いつも
眼ざめた僕の心に はなしかける
⦅ひとときの朝の この澄んだ空 靑い空
傷ついた 僕の心から
棘を拔いてくれたのは おまへの心の
あどけない ほほゑみだ そして
他愛もない おまへの心の おしやべりだ
ああ 風が吹いてゐる 凉しい風だ
草や 木の葉や せせらぎが
こたへるやうに ざはめいてゐる
あたらしく すべては 生れた!
露がこぼれて かわいて行くとき
小鳥が 蝶が 晝に高く舞ひあがる
立原道造 優しき歌』から
《11月27日のコンサート『SONNET〜ひとり芝居』で朗読》
良いことがあった日の夜も、泣きながら眠った夜も、次に目覚めた時には新しい朝がそこにある。
誰かに見せたい花と、誰かに食べさせたいごちそうと、自分のとっておきの笑顔を、新しい朝は迎えに来る。
もしも、誰かの「朝」になれたなら、来る日も来る日もぴかぴかの、誰かの「朝」になれたなら、こわいものなど何ひとつない、つよい心を授かるだろう。。。

朝に
おまへの心が 明るい花の
ひとむれのやうに いつも
眼ざめた僕の心に はなしかける
⦅ひとときの朝の この澄んだ空 靑い空
傷ついた 僕の心から
棘を拔いてくれたのは おまへの心の
あどけない ほほゑみだ そして
他愛もない おまへの心の おしやべりだ
ああ 風が吹いてゐる 凉しい風だ
草や 木の葉や せせらぎが
こたへるやうに ざはめいてゐる
あたらしく すべては 生れた!
露がこぼれて かわいて行くとき
小鳥が 蝶が 晝に高く舞ひあがる
立原道造 優しき歌』から
《11月27日のコンサート『SONNET〜ひとり芝居』で朗読》
2016年09月12日
『SONNET〜ひとり芝居』に寄せて。。。
庭のムラサキシキブが可愛い実をつけ始めた。
肌は、夏の陽射しを途端に忘れ、ずっとそうだったみたいに、朝の涼やかな空気を受け入れる。
《ムラサキシキブ 花言葉「聡明」「上品」》

ちょうど78年前の9月、ひとりの詩人が旅に出た。
”僕のなかには優しい小鳥が住んでゐます”
言葉がその想いを超えることは出来なくても、つなぎ合った心の指先同士は、深く強く離れることを知らない。。。

汽車に乗って、長崎に向かって。。。
旅だった9月に、若き詩人は『優しき歌』の編纂を一応終えた。
立原道造。
若き建築家、そして詩人。
その人生は短かく、残した言葉は今も鮮明で新鮮だ。
言葉を紡ぐように描かれたパステル画をみるたびに、心は少女の頃に帰る。。。
序の歌
しづかな歌よ ゆるやかに
おまへは どこから 来て
どこへ 私を過ぎて
消えて 行く?
夕映が一日を終わらせよう
と するときに
星が 力なく 空にみち
かすかに囁きはじめるときに
そして 高まつて むせび泣く
絃のやうに おまへ 優しい歌よ
私のうちの どこに 住む?
それをどうして おまへのうちに
私は かへさう 夜ふかく
明るい闇の みちるときに?
立原道造 優しき歌』から
2016年09月07日
お菓子と歌と愛情と。。。
お菓子がスキだ、大スキだ。。。
美味しいお菓子、美しいお菓子を食べたいと思う気持ちは、いい音楽を聴きたいと思う気持ちと同じだ。
《1802年創業、フランスのDALLOYAU「オペラ」》

この世には、美味しいものがたくさんある。
素材の味形をそのままに、美味しさを極限まで引き出すお料理は、まさに芸術だ。
そして、素材の形からは想像もつかない完成品として生まれ変わるお菓子には、なにか魔法のような特別な力を感じる事がある。

コーヒー風味のバタークリーム、ガナッシュ、ビスキュイ・ジョコンド、グラサージュ・・・
7つの層で出来ているDALLOYAU(ダロワイヨ)の「オペラ」は、私にとって魔法のお菓子だ。
ひとくち頬張るごとに、パリ オペラ座のアポロンの持つ、金の琴を思い出す。

大切な人へのご褒美には、お菓子がいい。
お口で感じる幸せは、高価な装飾品でもかなわない、魔法の力がある。
その人を想って探す気持ちの尊さが、そのまま伝わる魔法の味。
そして、いい歌を届けたいと思う気持ちもまた、美味しいお菓子、美しいお菓子を食べさせてあげたいと思う気持ちと同じなのだ。。。
2016年09月03日
トポトポと、トポトポと。。。
美しいものは、形をとどめない。
美しいものほど、そのままでいることが難しい。
花・雲・音楽・・・
そして、トポトポと流れる、透明で形を持たない水たち。。。

夏も終わりに近づくころ、いつもやっていたことがあった。
そのことにふと気づいたのは今朝。
ずっと何か忘れているようで、このところ、どことなく落ち着かなかった。
今月、9月は義父母、両母親の月命日だった。
早速、近くの道の駅で『おはぎ』を買ってきた。
いつもはお庭のお花を供えてあるが、今日は綺麗な菊の花も買ってきた。
今ではどこでも手に入る『おはぎ』だか、私が子供の頃は、「買う」ものではなく、「作る」ものだった。
娘達が小さい頃は、いただいた餅米で、義母がよく作ってくれた。
なぜ『おはぎ』にしようと思ったのかは自分でもわからないが、義母にその作り方を手ほどきした人への、敬意を表するような気持ちがあったのかもしれない。
私は会ったことも話したこともない人。
だけど、私の娘達は確実に何かを受け継いでいる。
髪の細さ、爪の形、声…
その一つ一つがありがたい。。。

自分が会ったことも話したこともない、数えきれない多くの人から受け継いだもの。
大切にしていくことは、私達にできる「ありがとう」のしるし。
トポトポと水が流れるように、時間は確実にすぎていく。
トポトポ・・・トポトポ・・・
静かな音をひびかせて、美しく形を変えながら。。。
美しいものほど、そのままでいることが難しい。
花・雲・音楽・・・
そして、トポトポと流れる、透明で形を持たない水たち。。。

夏も終わりに近づくころ、いつもやっていたことがあった。
そのことにふと気づいたのは今朝。
ずっと何か忘れているようで、このところ、どことなく落ち着かなかった。
今月、9月は義父母、両母親の月命日だった。
早速、近くの道の駅で『おはぎ』を買ってきた。
いつもはお庭のお花を供えてあるが、今日は綺麗な菊の花も買ってきた。
今ではどこでも手に入る『おはぎ』だか、私が子供の頃は、「買う」ものではなく、「作る」ものだった。
娘達が小さい頃は、いただいた餅米で、義母がよく作ってくれた。
なぜ『おはぎ』にしようと思ったのかは自分でもわからないが、義母にその作り方を手ほどきした人への、敬意を表するような気持ちがあったのかもしれない。
私は会ったことも話したこともない人。
だけど、私の娘達は確実に何かを受け継いでいる。
髪の細さ、爪の形、声…
その一つ一つがありがたい。。。

自分が会ったことも話したこともない、数えきれない多くの人から受け継いだもの。
大切にしていくことは、私達にできる「ありがとう」のしるし。
トポトポと水が流れるように、時間は確実にすぎていく。
トポトポ・・・トポトポ・・・
静かな音をひびかせて、美しく形を変えながら。。。
2016年09月01日
夏の名残の百日紅。。。
語り継がれる悲しい調べは、たった百日間の長さを奏でる。。。
《百日紅 花言葉「愛敬」》

命を救った王子様。
なぜ娘を残して旅にでた。
たった百日逢えないことが、どれほど悲しいことなのか、王子様には届かなかった。
悲しみにくれる王子様、愛敬いっぱいに呼びかけるのは、娘の命と引き替えに咲いた紅い花・白い花。

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《百日紅 花言葉「愛敬」》

命を救った王子様。
なぜ娘を残して旅にでた。
たった百日逢えないことが、どれほど悲しいことなのか、王子様には届かなかった。
悲しみにくれる王子様、愛敬いっぱいに呼びかけるのは、娘の命と引き替えに咲いた紅い花・白い花。

真夏の空を仰ぐのは、
真白な雲が恋しいときと、
赤い花と白い花、
あなた達に逢いたいとき。
夏の名残の陽射しより
もっと強くて、もっと優しい、
あなた達に逢いたいときなのです。
真白な雲が恋しいときと、
赤い花と白い花、
あなた達に逢いたいとき。
夏の名残の陽射しより
もっと強くて、もっと優しい、
あなた達に逢いたいときなのです。
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