
2021年04月01日
楽器の声。。。
ブーカ・・・ブーカ・・・
小学2年生まで、二階の私の部屋には足踏みオルガンがあった。
小学校に入るまで過ごしていた団地から持ってきたそのオルガンは、とても調子の良い楽器だった。
お引っ越しと同時に「自分だけの部屋」を与えてもらった私は、夕方になるとその足踏みオルガンを「ブーカ・・・ブーカ・・・」と弾いていた。
忙しそうに足を動かし、少しでも大きな音を出そうと必死に左右のペダルを踏んでいた。
クリスマスを間近に迎えた小学2年生の時、学校から戻ると母に促されて滅多に入らない応接間のドアを開けた。
目の前には真っ黒の大きなモノが”でん”と置かれ、ピカピカ光っていた。
「どう?クリスマスプレゼント!」
そう言って母は満面の笑みで黒いモノを指差した。
高校時代、病弱で音楽大学の進学を諦めた母にとっては、縦型のアップライトピアノは「夢の楽器」だった。
クリスマスに買ってもらうものを決めていた私は、よほどおもしろくない顔をしていたのか、母は「嬉しくない?」と夕飯の時も何度も聞いていた。
私が不機嫌になった最大の理由は、もう不要となった足踏みオルガンを、誰かにあげてしまうと母が言ったことだった。
自分の部屋にあって、いつでも弾ける足踏みオルガンと違い、わざわざ応接間まで行かないと弾けないピアノは、その頃どことなく遠い存在だった。
やがて、それがかけがえのない存在となることなど、知りもしなかった。
楽器というのは、鳴らしてあげると息を吹き返す。
楽器も持つ本当の声を聴いた時、私たちは何か大切なものをもらったような気持ちになる。。
今日は4月11日のコンサートに備え、リードオルガンの修理・メンテナンスをしてもらった。
不思議と子供の時に弾いていた足踏みオルガンのことが、よみがえってきた。。。
《YAMAHAリードオルガン》

《ふたば楽器(西條さん・加藤さん)》


Photo スタジオ・エコール
小学2年生の時、あまり嬉しくなかった「黒いモノ」は、今の私にとって同士のようなもの。
新しくグランドピアノを買った時も手放せず、今もレッスン室ではなく本宅に置いてある。
メトロノームを落として付けた傷も、弾きすぎてガクガクになってしまった鍵盤も、愛おしくて仕方がない。
「大事に使われていたオルガンですね。」
修理が終わって、加藤さんが言われた一言に心があたたかくなった。
このYAMAHAリードオルガンを大事に使っていた持ち主さんには、どんなストーリーがあったのだろう・・・と。

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2021年03月07日
コンサート「Salon de Musique Vol.2」終わりました!!!
コンサート「Salon de Musique〜音楽とトークとスィーツと Vol.2」の公演を無事に終えることができました。

昨年7月に開催予定だったこのコンサートは、8ヶ月を経て、昨日3月6日に開催されました。
あたたかいお客様に囲まれ、1部はプーランクとビュッシーのピアノ・歌曲からスタートしました。
《ソプラノ 白谷仁子 曲:プーランク「愛の小径」「モンパルナス」「パリへの旅」》

《ピアノ 竹中直美 曲:ドビュッシー『版画』から「塔」「雨の庭」》

《バリトン 原田泰彦 曲:ドビュッシー『2つのロマンス』から「ロマンス」「鐘」、『3つの歌曲』から「海は美しい」》

第2回目となった今回は、「女神の楽器」ともいわれるマリンバの音色を披露しました。サクソフォーンとの音の受け答えと、ディベルティメントには珍しく、神秘的で物思いにふけるようなメロディーとリズムがとても新鮮でした。
《マリンバ/アルト・サクソフォーン 奥田有紀 岡崎雄子 曲:湯山昭「マリンバとアルト・サクソフォーンのためのディベルティメント」》


第2部は、ステージと客席全体が「Salon de Thé」に・・・
《フランス語会話の教室帰りに立ち寄った「Salon de Thé」》

お店では、わけありマスターと謎のメイドさんがお出迎え。
スペインのはちみつ紅茶とマドレーヌから物語は始まりました。


《アルト・サクソフォーン 岡崎雄子 曲:デュボア 「スペイン風に」「フランス風に」》

奥田さんからマリンバの説明。お話も演奏も、キレよくチャーミング。
《マリンバ 奥田有紀 曲:ビゼー/朝吹英一 カルメン幻想曲》

ソプラノ・サクソフォーンとピアノの切ないメロディーが、会場を包み込みました。。
《ソプラノ・サクソフォーン 岡崎雄子 曲:ピアソラ 「Café」》

《バリトン 原田泰彦 曲:コープランド 「At the river」「I bought me a cat」「Long time ago」》



《マリンバ 奥田有紀 曲:プロコフィエフ/サミュ『ロメオとジュリエット』から「騎士たちの踊り」》


《ソプラノ/ バリトン 曲:ルコック『百人のおとめ』から「あぁパリ!陽気なところ」》


《アンコール 曲:コズマ 「タクシー運転手の悲劇」》

終演後、お客様のお見送りに出ることが出来なかったのは残念でしたが、イチゴイチエ(長浜)さんのマドレーヌと、私たちがあれこれ悩んで選んだ紅茶のティーバッグを感謝の言葉に変えて、お持ち帰りいただきました。
いつも前向きにコンサート開催のために動いてくださった文化産業交流会館のみなさま、どんな時も私の企画に寄り添ってくれた出演メンバー、チラシ・ポスター・当日のプログラムまで、いつも最高のものを目指してくださったスタジオ・エコールさん、応援の言葉で支えてくれた仲間・生徒さん、そして、当日わたしたちの演奏を一心に聴いてくださり、割れんばかりの拍手を送ってくださったお客様への感謝は、いつかコロナが「過去のこと」になっても、決して忘れることはありません。
2021年03月05日
コンサート「Salon de Musique Vol.2」いよいよ明日!!!
いよいよ明日、コンサート「Salon de Musique〜音楽とトークとスィーツと Vol.2」が開催されます。
昨年7月を予定していましたこのコンサートは、コロナ感染症を考慮し、8ヶ月の延期となりました。
「明日」という日を迎えることのできる喜びと、背筋がピンと伸びるような緊張感間の中で、今日無事にリハーサルを終えることができました。

コンサートが開催されるのか、中止になるのか、先の見えない中で準備を進めることの辛さは、音楽家なら誰もが感じることでしょう。
それは、大事に育ててきた花の蕾が、何日も何日もずっと開かないままでいるような。。。
第1回目からのスターティングメンバー、サクソフォーンの岡崎さん、ピアノの竹中さん。
新しいメンバー、バリトンの原田さん。
今回のゲストで、素晴らしいマリンバの演奏を披露してくださる奥田さん。
今回は、第1回目とはまた違った空間で、お客様と喜びを共感できると信じています。
メンバー一同、感謝と愛と笑顔でお送りします。
《リハーサル風景 ソプラノ 白谷仁子・ピアノ 竹中直美「プーランク」》

《ピアノ 竹中直美「ドビュッシー」》

《バリトン 原田泰彦・ピアノ 竹中直美「ドビュッシー」》
《サクソフォーン 岡崎雄子「ピアソラ」ほか》

《マリンバ 奥田有紀「プロコフィエフ /サミュ」ほか》

コンサートの模様は、改めてお知らせします。
おたのしみに。。。
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2020年12月16日
2020年の歌、唄、うた「オンラインレッスンの意味」。。。
3月。
私の生まれた月は、色んなことが動き出そうとする準備を始めます。
人も、植物も、空も。
でも、今年の3月は、私の周りでたくさんのことが止まってしまいました。
学校も、レッスンも、コンサートも。
オンラインでレッスン。
正直、ピアノや声楽のレッスンを画面越しにやることに賛成はできませんでした。
そんな私の背中を押したのは、私の呼びかけに即答でメールを返してくださった、生徒のお母様たちでした。
《youtubeより》

生徒に触れることもできず、そばで微妙な表情を見ることもできない不安さを持ちつつ、zoomとyoutubeを使ったオンラインレッスンが始まりました。


zoomによるレッスンは中学生以上の生徒に、小さな生徒には、あらかじめお家の方に家での練習を録音したものを送ってもらい、それをもとに専用youtubeを作成して、何度も見ながら練習してもらうというものでした。
youtubeのレッスンは、zoomを使えないヴォイストレーニンググループの皆さんにも、LINEからすぐ見てもらえる工夫をしました。
《レスピラシオン2「愛の讃歌」「オー・シャンゼリゼ」》

驚いたのは、オンラインレッスンを機に、「自主的に練習する」習慣がついたピアノの生徒が増えたことでした。
繋がろうとする私に、応えようとする生徒の心も嬉しく思いました。
どんな状況でも、ささやかでも、「やれること」はあるということを、私自身学びました。
7月から、ピアノも声楽も、そしてコーラスも、通常通りとはいきませんが、消毒、マスク、フェイスシールド、パーテーション・・・注意をはらいながら進めていけることに感謝しています。
そして、1日も早く、マスクを外した生徒たちに会える日を、心から待ちわびています。
2020年10月17日
リニュアル・ピアノコンサートを終えて。。。
10月17日。
スタインウェイ・リニューアルコンサートが終わりました。
オーバーホールからひと月。
今日はその音を披露することが出来ました。

ベートーベンのソナタ。
ショパンのノクターン、ポロネーズ。
ラフマニノフの前奏曲、ヴィカリーズ。。。
歴史が生んだ名曲たちは、消えることなく100年、200年、300年・・・と、生き続けます。
それは、頑なに守られてきたものがあるから。
伝えられてきたものを、また誰かが伝える。。
「守り続ける」美しさが、クラッシックにはあるのです。。
《竹中直美さん:ベートーヴェン ソナタ第14番 嬰ハ短調 作品27-2 「月光」/ ラフマニノフ10の前奏曲 作品23-4 ニ長調 作品23-2 変ロ長調 》

《平居妙子さん: ベートーヴェンソナタ第8番 ハ短調 作品13 「悲愴」/ ショパン ノクターン第8番 変ニ長調 作品 27-2、ポロネーズ第7番 変イ長調「幻想」作品61》

《白谷仁子:ラフマニノフ 14のロマンス 作品34-14「ヴォカリーズ」/ シューベルト 音楽に寄せて 作品88-4 D547》

《記念写真:ジュニアの皆さんと和やかに撮影会》
新しい音との出会い。
新しい人との出会い。
思いが重なって、素敵なコンサートを作ることが出来ました。。

3分に1のお客様の拍手は、満席のそれと変わらずあたたかかった。
スタインウェイがこれからも、たくさんの人たちに愛されますように。
私たちの住む町に、いつまでもいつまでも音楽が有り続けますように。
心からの感謝を込めて。。。
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2020年10月12日
リニューアル・ピアノコンサート〜ショパン。。。
切り離された絵。
一枚はパリのルーブル美術館。
もう一枚はコペンハーゲンのオードルップゴー美術館。
十代の私にとって、ショパンとジョルジュサンドの恋は、遠い大人の世界の物語だった。
お小遣いで買った「音楽の手帳 ショパン」(青土社)を隅から隅までなんども読んでいるうちに、いつの間にかグラビアのドラクロアが描いたショパンが、「私のChopin」となった。。

早朝、食事も早々にホテルを出て、セーヌ川沿いを楽しみながら歩いた。
フランスパンを小脇に挟んだ紳士、朝の散歩を楽しむ老夫婦。
全てが景色に溶け込んでいた。
次第に早足になる私の心は、もちろんルーブル美術館の一枚の絵。

《早朝のセーヌ川》
今回のコンサート(17日 リニューアルコンサート)第2部の始まりは、ショパンの「ノクターン第8番変ニ長調 作品27-2」(演奏:平居妙子さん)。
この作品は1835年、ショパンが25歳の時の作品。
ショパンが両親とカルロヴィ・ヴァリ(カールスバード)で5年ぶりに再開し、3週間ほど共に過ごせた幸せな年だった。
21歳で祖国ポーランドを離れ、パリで暮らしたショパン。
祖国への強い思いが、今も世界中の人を魅了し続けるのではだろうか。

ショパンと「唯一無二の友情」と言われる画家ウジェーヌ・ドラクロワ。
肖像画の少ないドラクロアがショパンを描いたのは、ピアニスト・作曲家であるショパンなのか、それとも友人ショパンなのか、聞いてみたい気がする。

2部の第2曲目は、ノクターン第8番から10年後の35歳の時からとりかかり、翌年に完成させた「幻想ポロネーズ 変イ長調作品61」(演奏:平居妙子さん)。
そのころの体調や精神状態を知ると、「最後の大曲」と言われる名曲を生み出したエネルギーの根源は何なのかとても興味深く感じるのだ。
リニュアル・コンサートの日、10月17日は、ショパンが永遠の眠りについた日である。
後日の葬儀には、モーツァルトのレクイエムによるミサ、最後までそこに立ち会ったドラクロワがいた。
遠い遠い存在の作曲家の作品を愛し、その生き方に共感したり、涙したり・・・
再現者である私たちは、与えてもらうばかりでなく、作曲家に誠実さを持って感謝を返さなくてはならないとおもう。
それは楽器に対しても同じ。
ピアノとショパン。
魅了され続けて40年が過ぎた。
その言葉の響きは、今も心を熱くしてくれる。
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一枚はパリのルーブル美術館。
もう一枚はコペンハーゲンのオードルップゴー美術館。
十代の私にとって、ショパンとジョルジュサンドの恋は、遠い大人の世界の物語だった。
お小遣いで買った「音楽の手帳 ショパン」(青土社)を隅から隅までなんども読んでいるうちに、いつの間にかグラビアのドラクロアが描いたショパンが、「私のChopin」となった。。

《2020年 冬 パリ「ルーブル美術館」にて撮影》
早朝、食事も早々にホテルを出て、セーヌ川沿いを楽しみながら歩いた。
フランスパンを小脇に挟んだ紳士、朝の散歩を楽しむ老夫婦。
全てが景色に溶け込んでいた。
次第に早足になる私の心は、もちろんルーブル美術館の一枚の絵。

《早朝のセーヌ川》
今回のコンサート(17日 リニューアルコンサート)第2部の始まりは、ショパンの「ノクターン第8番変ニ長調 作品27-2」(演奏:平居妙子さん)。
この作品は1835年、ショパンが25歳の時の作品。
ショパンが両親とカルロヴィ・ヴァリ(カールスバード)で5年ぶりに再開し、3週間ほど共に過ごせた幸せな年だった。
21歳で祖国ポーランドを離れ、パリで暮らしたショパン。
祖国への強い思いが、今も世界中の人を魅了し続けるのではだろうか。

ショパンと「唯一無二の友情」と言われる画家ウジェーヌ・ドラクロワ。
肖像画の少ないドラクロアがショパンを描いたのは、ピアニスト・作曲家であるショパンなのか、それとも友人ショパンなのか、聞いてみたい気がする。

2部の第2曲目は、ノクターン第8番から10年後の35歳の時からとりかかり、翌年に完成させた「幻想ポロネーズ 変イ長調作品61」(演奏:平居妙子さん)。
そのころの体調や精神状態を知ると、「最後の大曲」と言われる名曲を生み出したエネルギーの根源は何なのかとても興味深く感じるのだ。
リニュアル・コンサートの日、10月17日は、ショパンが永遠の眠りについた日である。
後日の葬儀には、モーツァルトのレクイエムによるミサ、最後までそこに立ち会ったドラクロワがいた。
遠い遠い存在の作曲家の作品を愛し、その生き方に共感したり、涙したり・・・
再現者である私たちは、与えてもらうばかりでなく、作曲家に誠実さを持って感謝を返さなくてはならないとおもう。
それは楽器に対しても同じ。
ピアノとショパン。
魅了され続けて40年が過ぎた。
その言葉の響きは、今も心を熱くしてくれる。
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2020年10月09日
リニューアル・ピアノコンサート〜ベートーヴェン ソナタ。。。
『やぶや森の中の道を、そして岩の上を歩くことの出来る自分を、この上もなく仕合せに思います。私のように自然を愛するものはないでしょう。森よ、木よ、そして岩よ、人生が欲するもっとも大きな「こだま」を恵たまえ。しかし私のみじめな聞こえない耳も、ここでは少しも苦になりません。どの木も自分に向かって、”聖なるかな”と讃えているようです.....』
1809年 ベートーベンがマルファッティー夫人に宛てた手紙から(世界音楽全集7 ベートーベン2)

ルッチプラザ で開催の「リニューアル・ピアノコンサート」まで1週間度となりました。
連日の弾き込みも1ヶ月をすぎ、今週はピアノ庫からホールのステージに移動して、出演者のお二人と、音色や音量についてお話ししました。
今回のコンサート企画では、ベートーヴェン、ショパン、ラフマニノフにターゲットを当て、2人のピアニストさんに曲を選んで頂きました。
今年12月に生誕250年を迎えるベートベンは、33曲ものピアノソナタ(番号のついているもの)を作曲しました。このことは、ベートーベンが活躍した19世紀前半、ドイツ、フランス、イタリアなどで職人たちが競って新しいピアノを発表し、音域・音色・ペダルなど進化を遂げた時代であったことが背景の一つとしてあげられます。

《48歳、耳が聞こえなくなったベートーヴェンが、後期のソナタを作曲した際使用していたロンドンの製作者によるピアノ》
(世界音楽全集7 ベートーベン2)
ここで裏話ですが・・・
まだ記憶に新しい、音楽企画湖音が企画した3年連続コンサート「エンジョイ・シリーズ」。
第2回目の「古典派」の際に、私はオール・モーツァルトでプログラムを組みました。
「古典派といえば、ベートーベンでは?」
という声もありましたが、私自身、ベートーベンを「古典派」というくくりの中にとどめたくない思いがありました。
確かに、伝統や形式を維持した理念は古典的と言えるのですが、ベートーヴェンの心にあったロマン主義は、確実に19世紀の作曲家に受け継がれたと思えるのです。
私の中で「ロマン派の出発点」であるベートベンのピアノソナタを、今回のような形でコンサートプログラムに組み込めたことは、とても幸せなことです。

《初期のソナタを作曲していた頃住んでいたハイリゲンシュタットの家》
10月17日のリニューアル・ピアノコンサートの第1部は、ベートヴェン ソナタ第14番 嬰ハ短調 作品27-2「月光」第1楽章アダージョ・ソステヌート 第2楽章アレグレット 第3楽章プレスト・アジタート(演奏:竹中直美さん)と、ソナタ第8番 ハ短調 作品13「悲愴」第1楽章グラーヴェ・アレグロ・ディ・モルト・エ・コン・ブリオ 第2楽章アダージョ・カンタービレ 第3楽章ロンド・アレグロ(演奏:平居妙子さん)を演奏して頂きます。
第14番 は「月光」として知られるソナタですが、ベートーヴェン自身が「ファンタジア風ソナタ」と記している通り、ファンタジア(幻想曲)の趣きが濃い作品です。また、「月光」と同様、改良された68鍵盤のピアノを使用していた初期の傑作として知られる第8番 は、初期の傑作と言われるもので、第14番「月光」第23番「熱情」とならんで三大ピアノソナタと呼ばれています。
”聖なるかな”という作曲家の心を、お楽しみいただければ幸いです。
★次回は第2部 ショパンについてお伝えします★
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2020年09月18日
おかえりなさい。ルッチプラザ「スタインウェイ 」。。。
米原市民交流プラザが2001年にオープンしてから、ずっと地域に、そして全国の演奏家達に愛されてきたピアノ”スタインウェイ” が、オーバーホールから帰ってきた。

《Photo studio école》
10月17日のコンサートを前に、9月の初めからスタインウェイ の弾き込みが始まり、出演者の竹中直美さん、平居妙子さん、そして、エンジョイコンサートでコーラス伴奏やジュニアオーケストラとの共演をしてきた澤村優子さん、私の4人が、かわるがわるに毎日ピアノ庫に通っている。
《9月18日(金曜日)》
その都度情報を共有しながら、次の調律までに、私は報告書をまとめている。
今まで、数え切れないほど共演してきたスタインウェイ の鍵盤を、これほどじっくり弾いたのは、私にとって19年来初めてのことだ。
私の場合、何時間もスケールを延々と引き続け、鍵盤の様子や音色に耳をすませ、地味でありながら心を「無」に、ただ「音」とだけ向き合える贅沢な時間を過ごしている。
《ハンマーにうっすらと溝が・・・》

息を止めて、そっと覗いてハンマーを見ると、うっすらと細い溝が確認できる。
「あとひと月で、どこまで変わるのだろう・・・」
そんなことを思いながら、時間の経つのを忘れる。
美しく威厳のある立ち姿の前に座っていると、自然と背筋が伸びる。
洋琴・・・カタカナよりも、そんな呼び名が似合うような気がするのは、私だけだろうか。
コンサートまでひと月。
共に歌える日が、ただ楽しみでたまらない。。。

「たくさんのお申し込み、ありがとうございました。8月いっぱいで予定の座席数は完了しました。当日は出演者一同心を込めて演奏いたします。特別企画”ジュニアによるピアノ演奏”のご紹介は次のブログにて。どうぞお楽しみに。」
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2020年08月05日
Steinway &Sons リニューアル・ピアノコンサート♬
2001年3月、米原市民交流プラザがオープンしてから19年、市民のみならず国内・海外のアーティストに愛されて来た「素敵なピアノ」は、ルッチプラザ ベルホール310のシンボルとして、19年の間、美しい音色をホールいっぱいに響かせて来ました。
そのピアノ「スタインウェイ」は、8月から専門家のもとでオーバーホールされ、9月から専門家によって弾き込み作業を、そして10月17日に生まれ変わった音色を再びベルホールに響かせます。


今年生誕250年を迎えるベートーヴェンのソナタ「月光」「悲愴」、「スタインウェイのピアノは、すべてにおいて完璧」と賞賛したラフマニノフの「前奏曲」と言葉のない歌「ヴォカリーズ」他、リニューアルしたスタインウエイの音色をお楽しみください。
今年は県内でもたくさんのコンサート、発表会が中止となりました。
ルッチプラザ のスタインウェイも、そのことをとても残念に思っていたはずです。
年に一度のステージのために練習を積んで来た米原市内外のジュニアのみなさんのために、特別企画として、コンサート終了後にステージを設けることにしました。
詳しくは、チラシ裏面、または直接ルッチプラザ(0749-55-4550) にお問い合わせください。
どんなときも、「希望の灯(ひ)」「音楽の灯(ひ)」が、絶えないことを願っています。
2020年05月24日
セントーレア(矢車菊)に想いを寄せる。。。
宿根草のセントーレア(矢車菊)を知ったのは20年以上も前のこと。
その頃、ドイツリートのお勉強が楽しくて、色々歌っていた。
特に好きだったのは、リヒャルト・シュトラウス (Richard Strauss 1864-1949) の歌曲「Kornblumen(矢車菊)」だった。
その花がどんな花かも知らず、ダーン (Felix Ludwig Julius Dahn,1834-1912) のとびきり美しい詩に惚れ込んでいたのだ。
お花図鑑でその花を見たときは、自分で育てようなどとは考えもしなかったが、それからずいぶん経ってから、セントーレア・モンタナという宿根の苗をお庭に植えた。
《セントーレア・モンタナ 花言葉「繊細な心」「信頼」》

花言葉の通り花弁は繊細で、大きな葉に守られるように咲く花は、気品に満ちている。
私が好きなのは、花が開く前の蕾。
高貴に満ちていて、何処と無くロココ調なムードを漂わせる。
リヒャルト・シュトラウスの歌曲「Kornblumen」の中でも、私が一番好きなのは詩の終わりの4行。
ーDir wird so wohl in ihrer Nähe,
als gingst du durch ein Saatgefilde,
durch das der Hauch des Abends wehe,
voll frommen Friedens und voll Milde.ー
慎ましく、美しく咲く矢車菊。
あの子達は決して手の届かない遠くではなく、そばにいる。
敬虔な平和と安らぎに満ちているそこには、夕風が吹き抜けているー
そんな光景を思い浮かべながら、私は矢車菊の色のドレスで歌った。
いつかまたステージで歌える時が来たら、歌って見たいと思った。
今年最初に蕾をつけた矢車菊 Kornblumenを見ながら、そう思った。
Kornblumen
詩 ダーン (Felix Ludwig Julius Dahn,1834-1912)
曲 シュトラウス,リヒャルト (Richard Strauss,1864-1949)
Kornblumen nenn ich die Gestalten,
die milden mit den blauen Augen,
die,anspruchslos in stillem Walten,
den Tau des Friedens,den sie saugen
aus ihren eigenen klaren Seelen,
mitteilen allem,dem sie nahen,
bewußtlos der Gefühlsjuwelen,
die sie von Himmelshand empfahn.
Dir wird so wohl in ihrer Nähe,
als gingst du durch ein Saatgefilde,
durch das der Hauch des Abends wehe,
voll frommen Friedens und voll Milde.