2017年03月14日

フライトコール


夕暮れ時に飛び立つ鴨
その啼き声に魅せられて
暗くなるまで湖岸に立っていた
暮れかかった帰り道も少しも恐くなかった
なぜなら
わかっていたから
真っ暗になる前に
必ず迎えに来てくれる母がいることが
小さな私には
わかっていたから。。。



フライトコール





夕暮れ時に啼き合う鴨
暗くなってもわかるように
自分はここだと知らせるために

親は子を
子は親を
見失わなぬよう呼び合うように



フライトコール





やがて子は
親から千の思いを受けて
自分の力で生きようとする
自分の羽で羽ばたこうとする

親はその時はじめて知る
自分の一部が切り離されるような瞬間を



フライトコール





それは確かに喜びで
それはまぎれもなく寂しさだ



フライトコール





母校の中学校を通りかかった

卒業式を終えたばかりの生徒たちと
少し離れて見守るお母さん達の姿
毎年繰り返される光景に
「子育て」
「子離れ」
良く似た活字の三文字が
ふと頭に浮かぶ

そして
いつかブログに書いた言葉がまた甦る

「大切な人は、ただ側にいてくれればいい。
これから別々に暮らす日が来ても、元気でいてくれればそれでいい。。。」

・・・フライトコール・・・

「元気だよ」「ここにいるよ」
あの日
啼き合う鴨に
小さな私はとてつもないおおきなものを教わった気がするのだ。。。