2013年03月29日
ピアノの先生(2)。。。
オドリコソウ・・・花言葉は「陽気な娘」
今夜は二人の陽気な娘達が、レッスンに訪れました。
二人は中学生。。。
学校のある日は、授業を終え、部活動を終え、夕飯もそこそこに済ませ、体操服でレッスンに駆けつけます。
明るく可愛らしい二人は、まさに「陽気な娘」、蕾のオドリコソウです。

4歳から音楽教室でピアノというものに触れてきた私が、最初に大きな影響を受けたのは、小学3年になったばかりの頃。
家まで出張レッスンしてくださったT先生でした。
大きなカールのセミロングに綺麗な顔立ち、体にほど良くフィットしたワンピース姿・・・
幼い私が初めて出会った「美しい女性」でした。
T先生は厳しく、決して私を「こども扱い」しませんでした。
レッスンから次のレッスンまで、殆ど練習しなかった私の楽しみは、最後にT先生がひいてくださる宿題のお手本。。。
それは、私がプロの音色を間近で聴いた最初でした。
私は、自分が音を出すレッスンの時間は全く興味が無く、ただただ最後の数分、T先生の演奏だけに神経を集中していたような気がします。
一週間、先生の素敵なお手本が頭の中を占領していたのです。
あるレッスンの日、楽譜を見ずに、「ト長調」の練習曲を何食わぬ顔で「ハ長調」で弾き始めた私を、T先生は真剣に叱って下さいました。
「音が違う」ということに対してでは無く、「楽譜を読む努力をしなかった」という事に対して。
2年近くお世話になり、T先生はご結婚の為、滋賀をはなれることになりました。
最後のレッスンの日、私は母に言われ、よそ行きのワンピースに着替え、珍しく練習した曲をきいてもらいました。
家のお庭で記念写真を撮った後、「はい!握手!」といって、T先生は私の手をギュッと握りました。
それから目に一杯涙をためて「これプレゼント! いつかきっと役に立つから!」と、一冊の本を私に差し出しました。
挿し絵の美しい、音楽の友社の『楽譜のしくみ』という本でした。
《楽譜のしくみ 見開き》

音楽理論の本にしてはビジュアル系の、T先生らしいその本は、小学生の私にはまだまだ難しく、その時はただ「先生の思い出」の品に過ぎなかった。
その私が音楽大学を目指すようになり、難しい楽典問題に行き詰まった時、どんな音楽通論よりも役だったのは『楽譜のしくみ』でした。
一冊の本が、「音楽は考えるものではないよ。」「基本はシンプルだよ。」と気付かせてくれたのです。
「いつかきっと役に立つから!」と行って、T先生が手渡してくれた『楽譜のしくみ』。
出会ってからお別れまで、T先生は私を一度も子供扱することはありませんでした。
いつも真剣に、「教え子」ではなく、「ひとりの人間」として接して下さいました。。。

もう一つ。
T先生が私に残して下さった最後の言葉があります。
「まさこちゃんは練習しないから、厳しい先生に、次お願いしといたからね!!」
美しい笑顔で、ユーモアたっぷりに。。。
Posted by 白谷仁子 at 22:15
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